2011/03/24

海外短期研究留学のレポート

G-COE国際研究助成(海外派遣)を利用してH22年12月6日からH23年2月28日までの約3か月間、アメリカ・カリフォルニア州のカリフォルニア大サンタバーバラ校で短期留学を行いました。現地で行った研究の概要と成果、アメリカでの生活、留学を通して感じた事などを報告します。

【研究課題】RNA結晶化のための自己環化型リボザイムの構築

【諸言】構造解析に必要なRNAの結晶を得るためには、純度の高いRNA試料が大量に必要となる。比較的長いRNAは酵素を用いて合成されるが、均一長のRNAを得ることはRNA合成酵素の特性上困難である。また、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)による精製では、長いRNAを1塩基の分離能で分けることは容易でない。この問題を解決するため、RNAを環化させることで精製を容易することを目的として自己環化型リボザイムの構築を目指した。RNAの環化には人工創製されたRNA-RNA連結リボザイムを用いた。本リボザイムの2次および3次構造情報に基づいて、自己環化型へと改変した新規リボザイムを設計、合成し、環化の効率を調べた。

【結果】DSLリボザイムはRNAの5'末端と3'末端の間にリン酸ジエステル結合を生成する。3'末端を一本鎖のウリジン塩基で伸長して5'末端に近接させた自己環化型変異体は環化反応を触媒した。反応溶液を変性PAGEにより分離すると、生成物は基質と同じ塩基数でありながら大きくことなる泳動度を示した。
次に、一本鎖リンカーの代わりに4WJを導入して同様に自己環化型にした変異体を構築した。基質とリボザイムが作る全体構造は反応点の上下にあるRNA間相互作用により安定化されている。このことから、一本鎖よりも剛直な4WJのほうが全体構造の安定化に寄与し、環化効率が向上することが期待された。実際、4WJを導入した変異体はすべて一本鎖変異体よりも速い反応速度を示した。さらに、4WJ変異体にヘリックスの伸長や三重鎖の導入を行っても自己環化が進行した。コントロール実験から、4WJはモチーフとしての立体構造を正しく形成した時のみ機能することが示唆された。

【今後の予定】開発した環化システムは環化効率が50%程度で、これはRNA調製に適用できる効率である。DSLリガーゼを含め、様々なRNAの立体構造解析に利用されることが期待される。以上の研究は共同研究として論文に発表する予定である。

【アメリカでの生活】
留学先のサンタバーバラは、ロサンゼルスから車で(車は一度も使ってないですが)北へ2時間半ほどの距離にある、スペイン風の景観で統一された観光地です。日本は厳冬だったそうですが、サンタバーバラは春かなと思うくらい暖かく、日中は半袖の方が快適という日も少なくありませんでした。
 留学生活が始まり、最初にぶつかったのは予想通り言葉の壁でした。とにかくみんなしゃべるのが早いのです。それに自身の日常会話ボキャブラリー(特にイディオム)の乏しさのため、何度も聞き直し、言い換えてもらったりしました。それでも旅の恥はかき捨て、とよく言われるように、不甲斐なさや自己嫌悪と戦いながらとにかくネイティブの人と会話することを心がけました。3か月の海外生活で、早口に対応したリスニング力と臆さずに英語をしゃべる気概が身に付いたのは大きな前進だと思います。
 3か月の生活での一番のピンチは、トイレが詰まったことです(トイレに限らず、浴室、洗面所、シンクなどすべての配管が弱かったです)。クリスマスの休暇シーズンのためアパートの管理会社も休み、という危機を救ってくれたのはPlungerです。この単語は一生忘れないでしょう。ピンチではないですが、アメリカの床屋(あれは美容室ではない、と思う。)で髪を切ってもらったのも、今ではいい思い出です。日本での美容師さん曰く、アメリカの美容技術のレベルは低いらしいのです。(これを確かめるため、そして)私の髪も伸びてきたので行きました。そして確かに、ひどかったです。(アメリカ人っぽくしてくださいという)私の注文以上にひどかったです。でも、これも経験だなと感じさせてしまうのが留学のいいところです。失敗を覚悟でとにかくやってみるのも悪くないなと、この経験から学びました。アメリカで驚かされたことは、アメリカ人は知らない人にでもしばしば話しかけるということです。「いい天気だね」、「どこから来たの」は当たり前で、他にも、買い物中に「俺もその時計が好きなんだ」や、テキサスサイズのブリトー(メキシカン料理)を持っていると「クレイジー!どこで買ったの!?」などなど、たくさん話かけられました。道を尋ねるでもなく気軽に話しかける文化に最初は戸惑った(というより自分に話かけていることに気付かないことが多かった)のですが、今ではそれが普通でむしろ楽しいものという認識に変わりました。
 留学中の研究は学位論文に関連するものだったので、普段日本で行っていた実験手法とほぼ同じでした。大きな違いはRI標識を使ったことです。RIの講習会を受けて、自分の実験が始められるようになったのは留学開始から4週目でした。スタートは遅かったのですが、結果は順調に出せました。研究をする上で一番の動機となったのは、自分はRNAの構造が好きだと再認識したこと、そのRNA構造の専門家であるJaeger教授やラボメートに面白いと思わせるアイデアと結果を出したい、という2点でした。特に、ポスドクのコーディと研究のアイデアについて熱く議論したことは忘れられません。Jaeger教授はPlan、Do、Seeを私に任せてくれて、また、研究結果をいつも興味深く聞いてくれて、非常にやりがいと責任感を感じながら研究ができました。
 留学をして良かったことは、快適な(慣れた)環境とは異なる環境に身を置けたことです。私が経験した異なる環境には、人との出会いや、異なる文化の経験、自分について考える機会がありました。これら全てが、今後の研究生活、そして人生にとって財産になると思います。
最後に、このような貴重な経験を与えてくださった、Jaeger教授、ラボメートとその家族、古田教授、井川准教授、G-COEプログラム関係者の皆様に感謝申し上げます。(工学府 博士2年 石川隼也)

 

<ラボメートとの飲み会(左;筆者右端)>      <Jaeger研の入っている建物(右)>

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ラベル: 研究留学
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