ニュースレター No.7

テキサスA&M大学カレッジステーション校 留学体験記
博士後期課程三年 高原研究室 有田 寛

G-COE国際研究助成(海外派遣)を利用して、2013年2月終わりから3月はじめまでテキサスA&M大学カレッジステーション校にて短期留学した。テキサスでの生活は、良くも悪くも今後の学校生活に影響を与えた。特に、Sue先生の研究室の学生と過ごした数日は、少なからず人生観を変えさせてくれた。
留学体験を報告するに当たり、まずテキサスA&M大学およびSue先生の研究グループについて紹介したいと思う。テキサス州は、人口・面積ともに全米第2位の州である。「テキサス」は、インディアン部族のハシーナイ連合のカドー語で「友人」または「同盟」に由来し、スペイン人がカドー族そのものと東テキサスにおけるその入植地域の名前にあてたものである。研究室でも、スペイン語の単語を使うことが稀にあり、テキサスの歴史を感じた。テキサス共和国時代から使用されている、白い星をひとつあしらった州旗からローン・スター・ステイトとも呼ばれ、キャンパス内ではいくつもの「一つ星」を見ることが出来る。Sue先生の研究室は、キャンパス内大通りから少し入ったところにある。建物は三階建てで、居室は二階、実験室は一階と二階にあり、どの部屋もStudent IDカードが無ければ入室ができない。もちろん、私はIDカードを持っていないので、毎回Kevin Whiteのものをお借りした。Sue先生の研究室は、どちらかといえば朝型だ。9時には、ほとんどの学生が登校して、18時ごろ退室し、夜は仲間と夕食を共にしたり、遊びに行ったりする。映画館でコメディー映画を観たとき、英語が聞き取れず内容は良く分からなかったが、主演の女詐欺師の動きが面白くて思わず笑ってしまった。そんな時、多くの観客が声を出して笑うアメリカでは、ひとり突然笑ってしまっても恥ずかしいという心配が無く、安心である。
Sue先生の研究室に留学するきっかけとなったのは、昨年、Sue先生の研究グループのKevin Whiteが高原研究室に二ヶ月間留学していたことである。彼の主研究は、高分子マトリックス中に無機材料を分散させ、力学物性を向上させることを主眼において進められている。私も、高分子薄膜表面の力学物性評価を行っていたので、物性評価のノウハウを得たいと思い、留学に到った。私の目当てである技術は、高分子材料表面のスクラッチ痕の光学顕微鏡観察によって材料物性を評価する、というものだった。テキサスに着いてすぐ、測定を教えてもらい評価を行ったが、なかなかうまくいかなかった。その原因として、測定のスケールが大きく、私のサンプルでは薄すぎたことにあり、試行錯誤したが最後までうまくいかなかった。しかしながら、ナノスケールのスクラッチ試験に向けて、いくつものテクニックを学べたことは、非常に価値があるものであったことを強調しておきたい。彼らの技術は、最先端であることは間違いないし、何より自らのテーマに誇りを持って研究を進めていた。
ある日、研究室の研究ミーティングに参加した。日本で言う検討会のようなものだ。研究グループ全員が集まり、毎回一人の発表者が研究の進捗状況を説明する。すべての参加者が積極的なディスカッションを行い、会場が静まることは一切無い。会を仕切り、積極的なディスカッションを行っているのが学生であると知り、とても驚いた。このあたりに日本と米国の違いが感じられた。もちろん、日本のやり方にもいいところがたくさんあるが、米国のやり方を大いに参考にする必要があると感じた。
銃所持率が高いテキサス州において、銃犯罪が多いことは周知の事実であるが、特に恐怖を感じることなく生活を送ることができたのは、朝夕の送り迎えやいろいろな世話をしてくれたKevin White、ランチを共にしスペイン語やスラングを教えてくれたMarouen Hamdi、Spencer Hawkins、一緒にディナーに行ってくれたKevin Laux、困ったら頼ってしまったMinhao Wong、色々な手続きをしてもらった秘書のIsabel Cantu、Sue先生の家まで送ってくれピアノ演奏まで披露してくれたPeng Liu、そしてもちろん英語の拙い私を快く迎え入れてくれたHung Jue Sue先生のおかげである。ここで感謝の意を称したい。さらに、留学の機会を与えていただいた卓越した大学院拠点形成支援補助金事業および卓越事務室のスタッフの方々に深く感謝を申し上げたい。留学での経験は今後の研究生活での糧になり、十二分に活かされることだろう。最後に、私の拙い文書が、皆様の留学時の参考となれば幸いである。

 
 
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(研究グループでの会食;著者、左側、手前から三番目)
 

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